「おばあちゃんの原宿」として有名な巣鴨地蔵通りは、江戸時代中期ごろより旧中山道の出発地点日本橋から出発して、最初の休憩所(立場)が点在して街並みが作られました。
現在に至るまで商業や信仰の場として栄える場所。旅人で大いに賑わいを見せるその様子は、今も昔も変わらないのです。
前回の「試衛館道場跡」に引き続き、今回は活気あふれる巣鴨地蔵通り商店街を歩き、さまざまな史跡を巡って行きます!
巣鴨地蔵通り商店街を歩く
お店がずらり!商店街のメインストリート
今回の史跡巡りの始まりは巣鴨駅から。都営三田線巣鴨駅のA3出口から出ると、ほぼ商店街の正面に出ます。
人の流れに乗り、吸い込まれるように商店街の中へ。「巣鴨地蔵通り商店街」の看板が堂々とお出迎えしてくれます。
平日の昼近くでしたが、人々が行き交いとっても賑やか。中高年の方はもちろんのこと、外国の方も多いような印象でした。
全長約780mのメインストリートに面した約200のお店の数々。さてどこから見ようかしら、なんて贅沢な悩みを抱えるほど所狭しと並んでいます。
塩大福が有名な「元祖 塩大福みずの」やスイートポテト・大学イモが絶品の「おいもやさん興伸」などの和菓子店から、お昼時に賑わう「巣鴨ときわ食堂」。幸運を呼ぶ赤いパンツを販売する「日本一の赤パンツ マルジ 赤パンツ館」などなど、魅力的なお店が沢山!
そんな中、私が最初に向かうのは・・・。
まずは昼食「ファイト餃子」
時刻はちょうどお昼時。まずは空腹を満たすため、目星をつけていた「ファイト餃子」に直行。
メインストリートからは少し離れ、路地一本入ったところにあるお店。メインストリートに面した「寝具しのはら」のお店を目印に右折すると辿り着けます。
稲荷型のコロンと丸い「ホワイト餃子」が有名なチェーン店で、「巣鴨 昼食」で検索すると必ずと言っても良いほど上がってきます。休日は特に、営業時間前から行列ができるという人気ぶり。
前回巣鴨に来た時は時間が無くて入れなかったので、リベンジマッチです。
お店の待ち時間・雰囲気
待ち時間は7,8分くらい。
営業開始10分後にお店に辿り着きましたが、2組のお客さんが店の前で並んで待っていました。流石は人気店、平日でも並ぶのか・・・とちょっと驚き。
しかし回転率は良いようで、いくらも待たずにお店の中から店員さんが出てきて、中へ入る様促されました。1人者の私は入ってすぐ、右側にあるカウンター席へ。
奥側の端っこ席だったのですが、レジスターの真横でした・・・。そして、身長154㎝の私には若干高めの椅子。爪先立ちで座っていましたね、ハイ。
席からは厨房がよく見え、3,4人の方がせっせと調理をしていました。
カウンター席は5人程度が座れるくらいのサイズで、そのほかはテーブル席。
客層は家族連れやカップルなどから、サラリーマン、職人風の人、単身の若者など様々。女性1人でも気後れすることなく入ることが出来るな、と感じました。
難点があるとすれば2つ。
お客さんの回転率が良いため、ひっきりなしに人の出入りがあること。そして店内がかなり狭く、人のすれ違いにも苦労することです。
小さい子供連れや、静かに落ち着いて食事をしたい人には不向きかも・・・
「チャーハン餃子4コセット」を注文!さて、お味は・・・
メニューはこんな感じ。餃子がメインなので、品数自体はそこまで多くないです。餃子は注文を受けてから焼いているので、出来上がりまでに15分程度時間がかかるとのこと。
私は「セット&単品」の中から「チャーハン餃子4コセット(税込み1,000円)」を注文しました。
事前に決めていたので、カウンター席に通されてすぐに注文を取って貰いました。店員さんは4,5人ほどいて常に店内を歩き回っているので、声を掛けるのに苦労はしないと思います。
待っている間、他の人の注文を聞いていたのですが、私が頼んだメニューと同じものをセレクトしている人が多いようでした。複数人で来ている人は、プラスで「焼き餃子1人前(8コ、税込み620円)」とかを注文していましたね。
5分程度待っていると、先にお味噌汁とチャーハンがやってきました。お味噌汁はおまけみたいです。冬の東京を歩き廻り、冷え切った体に沁みます。あっつあつ。
お味噌汁をふぅふぅやっていると、数分の後、お待ちかねの餃子がやってきました!
コロンと丸くて可愛らしいフォルムの餃子。思っていたよりも大きめでした。
割ってみると、焼きたてほやほやの証拠。湯気がボワンと立ちあがります。中の具材はシンプルで、刻んだキャベツやネギなどの野菜と豚肉。渡された小皿に、テーブル備え付けの醤油とラー油を入れて付け、いただきます。
ホワイト餃子独特の外サックサク、中モッチモチの触感がたまりません。急いで口に運んだので、熱すぎて舌を火傷したのはご愛敬。
チャーハンは刻んだ紅ショウガの上に炒り卵が乗っていて、これまたシンプル。黒コショウがピリッと効いていました。
食いしん坊の小食である私ですが、これいくらいの量がちょうどよかったです。餃子8コとか頼んだら流石にきつかったかも。餃子1つが結構ボリューミーでした。
ファイト餃子は、生餃子のテイクアウトが可能。私は今回購入しませんでしたが、食後の会計時に一緒に餃子を買って帰られる方も結構居ました。
ちなみに、会計は現金払いのみだったよっ
ここでの滞在時間は45分ほど。
ファイト餃子のアクセス・詳細情報
住所 | 〒170-0001 東京都豊島区巣鴨4−23−6 |
営業時間 | 🔷水木金 11:30 ~ 14:00(L.O. 13:30) 17:00 ~ 20:00(L.O. 19:30) 🔷土日祝 11:30 ~ 14:00 15:30 〜 売り切れまで ※売切れ次第、閉店 |
定休日 | 毎週月、火曜日、毎月最終水曜日/年末年始 |
支払い方法 | 現金のみ |
アクセス | 🔷JR巣鴨駅より 正面出口から白山通り経由で徒歩約10分 正面出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約12分 🔷都営三田線巣鴨駅より A3出口から白山通り経由で徒歩約7分 A3出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約8分 |
駐車場 | 専用の駐車場はありません 近隣のコインパーキング「ポスパーク巣鴨4丁目」(20分/300円)など |
関連サイト | ファイト餃子公式サイト「ファイト餃子」 巣鴨地蔵通り商店街公式サイト「ファイト餃子」 |
ファイト餃子の地図
お土産はこれで決まり!「元祖 塩大福みずの」の塩大福
史跡巡りに戻る前に寄り道していきます。
巣鴨でお土産と言えば行列必至の有名店「元祖 塩大福みずの」に塩大福を買い求めました。
昭和12年創業の塩大福発祥のお店。コシのあるお餅と、後を引かないサッパリとした甘さの餡は塩味と甘味のバランスが最強です。
前回巣鴨に来た時にお土産にと購入して見事にハマってしまいました。「リピ確定」というやつ。
おすすめは「元祖塩大福5個入りパック」
塩大福単体(税込み150円)から購入できますが、お土産用なら断然「元祖塩大福5個入りパック(税込み750円)」がおすすめ。
私は今回、このパック1つと、草餅(税込み160円)を単品で1つ購入。草餅もパックの中に入れてもらい、お土産として持ち帰りました。
ちなみに、食べ歩きをしたい場合は小さいビニール袋に入れてくれます。
他にもみたらし団子やどらやき、フルーツ大福などなど、和菓子好きにはたまらないラインナップ。メニューは公式サイトに記載されているので、要チェックですよ!
平日の昼過ぎでしたが、それでも3,4組のお客さんが並んでいました。
行列覚悟でも食べる価値あり!
元祖 塩大福みずののアクセス・詳細情報
住所 | 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨3-33-3 |
営業時間 | 9:30~18:30 |
定休日 | 年中無休 |
支払い方法 | 現金のみ |
アクセス | 🔷JR巣鴨駅より 正面出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約5分 🔷都営三田線巣鴨駅より A3出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約3分 🔷都電荒川線庚申塚駅より 商店街経由で徒歩約10分 |
駐車場 | 専用の駐車場はありません 近隣のコインパーキング「タイムズ巣鴨第14」(60分/440円)など |
関連サイト | 元祖塩大福みずの公式サイト「巣鴨 塩大福 発祥の店 みずの」 巣鴨地蔵通り商店街公式サイト「元祖 塩大福みずの」 |
元祖 塩大福みずのの地図
商店街に溢れる歴史の香り
満腹になった体を抱え、商店街を歩きます。
道中のところどころに、巣鴨やその周辺にまつわる様々な歴史について、説明が書かれています。商店街を歩きながら、巣鴨の歴史に詳しくなれちゃいますよ。
巣鴨地蔵通り商店街の史跡を巡る
さぁ、お待ちかねの史跡巡りに戻ります。
古くから栄える巣鴨は史跡も沢山。商店街沿いにある史跡で、今回私が巡ったのは「とげぬき地蔵尊 髙岩寺」「真性寺」「庚申塚・猿田彦大神」の3カ所です。
まずは「とげぬき地蔵尊」で有名な「髙岩寺」に赴きます。
とげぬき地蔵尊 髙岩寺
髙岩寺は慶長元年〔1596〕に開創されたお寺です。
最初は神田明神同朋町(現・千代田区外神田2丁目 神田明神社殿の右手後方)にありましたが、明暦の大火や東京都市計画の影響で2度の移転を繰り返し、巣鴨の地にやってくるのは明治24年〔1891〕のこと。
ドンッと大きい紅白提灯がインパクトのある山門。
この提灯は令和2年〔2020〕に作られたそうで、かなり新しいものなんですね。近年は外国の方の参拝者も増えているので、提灯に手が当たらないように高さを調節したんだとか。
提灯の下をくぐる時、思わず手を伸ばしそうになりました。こういうのって、触ってみたくなりますよね。低身長の私では届かないと分かっているんですけど。
山門の真横には授香所があり、とげぬき地蔵尊に献じるお線香やろうそく、洗い観音を拭うタオル、御朱印帳などが購入できます(営業時間:7:00~17:00)。
山門の周辺にはいくつか屋台が出ていて、七味唐辛子やお守りなどが売られていました。
本堂・地蔵殿で特別祈祷を拝聴
山門をくぐり、正面に進むと大香炉がもっくもくと煙を上げています。こういうのを見ると、ついつい頭に煙を浴びたくなっちゃう。
敷地はとっても広くて開放的。時刻は昼過ぎということもあり、人はそこまで多くなく、のんびりと境内を散策できました。
大香炉を通り過ぎた奥、山門のほぼ真正面にあるのが本堂の地蔵殿です。本尊であるとげぬき地蔵尊が奉安されています。さっそく、参拝のため地蔵殿へ。
とげぬき地蔵尊とは
本尊「延命地蔵菩薩」はとても小さな「霊印」に現れた、お地蔵さまの「印像」です。
霊印は正徳3年〔1713〕重病の妻の快癒を一心に願っていた髙岩寺の檀徒、田付又四郎の夢に現れた地蔵菩薩が、又四郎に授けたとされています。又四郎が地蔵菩薩のお告げにしたがい、霊印の地蔵尊像を1万枚の紙片にうつしとり、隅田川に流して念じたところ、翌朝 地蔵尊が妻の前で病魔を退治し、妻はすみやかに健康を取り戻し、無病となりました。
正徳5年のこと、大名屋敷で針を誤飲した女性に、この地蔵尊像を写し取った紙札を飲ませたところ、 針が紙札の地蔵尊を貫いて出てきたのが「とげぬき」のはじまりです。
「霊印」は享保13年〔1728〕に髙岩寺に奉納され、以来本尊として信仰をあつめています。現在は髙岩寺本堂(地蔵殿)内の正面 須弥壇上に奉安されています。
(曹洞宗萬頂山高岩寺公式サイト「「とげぬき」の由来」より引用)
地蔵殿の中ではちょうど13:00から行われる特別祈祷の最中でした。
ほぼ毎日行われているもので、約20分の法要と5分の法話を聞くことが出来ます。年3回修行している「大祭」を簡略にし、数名の僧侶で修行する「ちいさな大祭法要」とのこと。
法要中は自由に上殿に上がれ、法要と法話を間近で聞くことが出来ます。私は本殿の入口近くで法要を聞きましたが、上殿のイス席で手を合わせながら聞いてらっしゃる方もいました。
線香の独特の香りの中、ドォンと太鼓が叩かれ、お経の合間にならされる大きな梵音具がなんとも大迫力。私も周りの人に倣って、手を合わせて拝聴しました。こういった行事には疎い私ですが、それでも心が洗われるような心持になるのが不思議ですね。
ちなみに、係りの方が案内板を持っていましたが、録音や撮影は厳禁です。
法要中も本殿は出入り自由ですので、中で参拝のみして出て行かれる方ももちろんいました。私も5分ほど法要を見学し、頭を下げて本殿を後に。時間があれば最後まで聞きたかった・・・。
全身をゴシゴシ、「洗い観音」
髙岩寺の見どころのもう1つが、本堂のすぐ真横にいらっしゃる「洗い観音」。水をかけて洗ったところが良くなるとされ、広く信仰を集めています。
元々は江戸時代に「明暦の大火」で妻を亡くした檀徒が供養のために像立したものですが、水を掛けて洗い清めるお参りの形が自然に定着したそうです。
ちなみに、この観音様は2代目。
初代の洗い観音は、戦前から続く参拝によって摩耗してしまい、今は2代目洗い観音の後方にある厨子に納められています。毎月18日の朝~14:00まで開帳しており、初代洗い観音も見ることができます。
この日は残念ながら、初代の洗い観音様は拝めませんでしたが、2代目の洗い観音だって効力は変わりません。
むしろ、代替わりを経てご利益も2倍になっているハズ!
普段はもっと人が並んでいるのか、沢山の列ができる前提でポールで仕切られ、整列できるようになっています。
私が行った時、前に3組ほど並んでいて、洗い終わるのを順番に待っていました。
水を掛けるひしゃくとタオルは洗い観音の足元に用意されています。まずはひしゃくを使って、全身に水を掛けてゆきます。
さて、どこをきれいにしようかしら、なんて考えながらタオルを手に取った私。最近は目や髪、肌の乾燥が気になるし、寒さからくる身体の冷えも深刻。足の調子も良くない時があるし・・・なんて思った結果・・・。
遠慮はいらねぇ!全身くまなく洗うっきゃない!
大は小を兼ねる、全身洗っときゃ間違いない。そう思い、気づけば全身隅々、足のつま先までタオルでゴシゴシしていました。恥とか外聞?そんなの健康の前には無力です。
こうして洗われた観音様は、そりゃもうピッカピカでした。ちなみに、他の人も全身くまなく洗ってましたよ。そりゃあ摩耗もするわけだよねぇ。
とげぬき地蔵尊の御影・お守り・御朱印
とげぬき地蔵尊は秘仏であるため、直接見ることはかないません。
その代わり、本尊を写し取ったお札「御影」を購入することができます。その他お守り類、御守護(おまもり)・開運・厄除け・交通安全・腹帯(あんざん)・虫封(こどものおまもり)などなど、いずれも本堂にて購入可能。
郵送でも購入できます。詳しくは公式サイトにて。
御朱印は本堂にて、開門時間内(6:00~17:00)に授与してくださいます。御朱印帳が無い場合は「かきおき」を授与してくださるとのこと。年始などの混雑時の授与は「かきおき」のみになることがあるそうなので、ご注意を。
髙岩寺のアクセス・詳細情報
住所 | 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨 3-35-2 |
開門時間 | 🔷本堂開門 6:00~17:00(4の日は~20:00) |
定休日 | 年中無休 |
アクセス | 🔷JR巣鴨駅より 正面出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約5分 🔷都営三田線巣鴨駅より A3出口から地蔵通り商店街経由で徒歩約5分 🔷都電荒川線庚申塚駅より 商店街経由で徒歩約10分 |
駐車場 | 専用の駐車場はありません 近隣のコインパーキング「タイムズ巣鴨第14」(60分/440円)など |
関連サイト | とげぬき地蔵尊髙岩寺の公式サイト「曹洞宗萬頂山高岩寺公式サイト」 |
髙岩寺の地図
髙岩寺のお次は、巣鴨庚申塚へ!
とげぬき地蔵髙岩寺を後にして次に向かうのは、「巣鴨庚申堂猿田彦大神」。庚申塚のほか、猿田彦大神が祀られています。
巣鴨地蔵通り商店街の端っこにあるので、とげぬき地蔵尊髙岩寺から歩いて10分くらいかかりました。「🚥庚申塚」を右折すると、すぐ右手に巣鴨庚申塚が現れます。
交通量が多い道く、さらに人の行き来も多いので注意してください。
道を曲がってすぐに「中仙道庚申塚 猿田彦大神庚申堂」の石碑があります。
巣鴨庚申堂猿田彦大神
巣鴨庚申塚は江戸時代に中山道の立場(休憩所)として栄え、旅人のために休憩所として簡単な茶店が並び、人足や馬の世話もしていました。
その賑わいの様子は「江戸名所図会」や、歌川広重の浮世絵にも描かれています。
中山道板橋宿から近く、また、飛鳥山や王子道への道しるべも兼ねて建てられたのが「庚申塔」。
現在、その庚申塔は本殿の「庚申堂」の中に保管されています。
庚申信仰と庚申塚
「庚申」とは、十干(甲・乙・丙・丁・・・庚・・・)と十二支(子・牛・虎・卯・・・申・・・)とを組み合わせた六十干支を暦に当てはめ、年と日を表すのに用いられる呼び名の1つ。庚申の日は60日に1度巡ってきます。
「庚申信仰」は、「人間の体内には三尸という虫がいて、常に人間の犯す罪過を監視しており、庚申の日に60日間の内に犯した罪を体内から抜け出して天帝(創造主)に報告する。だが、主である人間が起きていれば、体内を抜け出して天帝に報告することができない。そのために、庚申の日は徹夜をして夜を明かす」という、中国の道教の考え方から始まった信仰です。
庚申塚や庚申塔は、その夜明かしの集会を3年18回続けた記念に建立されました。
▼参考
目黒区公式サイト「庚申塔って何」
国立国会図書館 日本の暦「第三章 暦の中のことば」
ジャパンナレッジ 国史大事典「庚申信仰」
石碑の横には庚申堂の由来記が置かれ、さらにその左横には山門がぱっくり口を開けています。提灯には「猿田彦大神」の文字が。
庚申塚と猿田彦大神
巣鴨庚申塚に庚申塔が置かれたのは文亀2年〔1502〕の戦国時代。高さ8尺(約2.4m)で、現存していれば区内最古の石碑でした。
明治初めに千葉県銚子市の猿田神社より、猿田彦大神が合祀されます。
猿田彦大神とは、国つ神の1つ。天孫降臨の際に道案内をしたということから、「道の神」「旅人の神」とされるようになり、道祖神(村落の境界に置かれ、外部から来襲する悪霊などを追い払う神)と同一視されることも。
「猿」と「申」の漢字の混同から、庚申の日に猿田彦大神を祀るようになりました。巣鴨の庚申塚だけでなく、庚申塚と道祖神がセットで祀られているケースは他の地でも見られるようです。
巣鴨の庚申塚は、「猿田彦大神」のほか、「地津主大己貴神(大国主命の別名)」と「人津霊少彦名神」が祭神として祀られています。
髙岩寺の山門が大きかったからか、こちらの山門はずいぶんとコンパクトに見えますね。
正面に見えるのが本殿の庚申堂。目の前に見えるので、思わずペコリとお辞儀をしてから山門をくぐります。
本殿・庚申堂と境内
山門をくぐり、境内へ足を踏み入れると、猿の石像がお出迎えしてくれます。赤い前垂れを掛けているのが印象的。
思った以上にこじんまりとしている境内の中。左右には御水舎や由来書きの石板などが所狭しと並んでいます。
まずは階段を数段上がった先、本殿である庚申堂へご挨拶。
最初に造られた庚申塔は砕けて壊れてしまい、現在、この庚申堂内には明暦3年〔1657〕に建立された2代目の庚申塔が納められています。
壊れた原因は、明暦の大火後、復興のために運び込まれた木材が江戸の入口であった巣鴨に集積されました。その際、庚申堂の碑に立てかけた竹木が重心を失い、庚申塔に倒れ当ったことで5つに砕けてしまったんだとか。
砕けた庚申塔はそのまま土の中に埋め、その上に新しい庚申塔を建立したと言われています。
(参考:巣鴨庚申堂奉賛会公式サイト「巣鴨庚申塚由来記」)
参拝を済ませ、少し境内を散策。
本殿の横は広めのスペースが明けられていました。ちょっと開放的。
本殿の手前には、御水舎があります。この季節の御水舎の寒々しいこと・・・。
その向かい側には「江戸名所」と名を打たれた石板と、「榎本留吉翁顕彰碑」「庚申堂建設の由緒書き」などが並んで置かれています。
敷地は狭いけど、読み物が沢山あって退屈しないわ、と思いつつふむふむとそちらの方に移動。
「江戸名所図会」に描かれる「巣鴨庚申塚」
天保7年〔1836〕に刊行された「江戸名所図会」には「巣鴨庚申塚」と題された項があり、庚申塚とその周辺の風景が描かれています。
茶店に腰を下ろし休憩するや、煙草をふかす人。道中には駕籠かきや馬に乗る人、ケンカをする人まで様々。当時の喧騒や雑踏が、耳に届いてきそうなほど賑々しく描かれていますね。
中央の水色の丸囲いが道標で、「右わうし(王子)道」の記述があります。
右端の赤丸で囲ってあるのが巣鴨庚申塚にある「庚申塔」。
位置関係から、現在の地蔵通りと折戸通りの交差点付近の様子を描いたもの。挿絵向かって右側が日本橋方面、左奥が板橋方面となります。
ちなみに、嘉永2年〔1849〕~文久2年〔1862〕に発行された尾張屋清七の『江戸切絵図』「巣鴨絵図」では、「茶屋」の文字と「庚申塔」らしきものが描かれています。
庚申堂本殿の由緒
庚申堂は昭和8年〔1933〕昭和天皇の御大典記念に、巣鴨の鎮守様であった氏神様天祖神社が新築され、その余罪の一部を用いて庚申堂本堂が改築されいました。
昭和20年〔1945〕に戦災によって全焼してしまいますが、榎本留吉氏が仮本堂を建築。昭和47年〔1972〕には庚申堂改築奉賛会によって新本堂を建て直し、今に至ります。
庚申様祭礼日と御朱印
巣鴨庚申堂では、一般社団法人巣鴨庚申堂奉賀会主催で「庚申の日」に祭礼が行われています。
年に6~8回ほど行われており、御朱印は年6回の例大祭の時にいただけるようです。
開催日や御朱印については、一般社団法人巣鴨庚申堂奉賀会の公式サイトに掲載されているので、詳しくはそちらでご確認ください。
巣鴨庚申堂猿田彦大神のアクセス・詳細情報
住所 | 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨4丁目35 |
アクセス | 🔷JR巣鴨駅より 改札正面から地蔵通り商店街経由で、徒歩約15分 🔷都営三田線巣鴨駅より A3出口を出て地蔵通り商店街経由で、徒歩約13分 🔷都電荒川線庚申塚駅より 駅前交差点「庚申塚」の目の前(庚申塚側商店街入口)徒歩約1分 🔷都営バス「とげぬき地蔵前」より 地蔵通り商店街経由で、徒歩約12分 都営バス「巣鴨4丁目」より 地蔵通り商店街経由で、徒歩約6分 |
駐車場 | 商店街に駐車場はありません 近隣のコインパーキング「三井のリパーク 西巣鴨1丁目駐車場」 (15分/330円)など |
関連サイト | 一般社団法人巣鴨庚申堂奉賀会公式サイト「巣鴨庚申塚」 巣鴨地蔵通り商店街公式サイト「巣鴨庚申塚」 |
巣鴨庚申堂猿田彦大神の地図
巣鴨庚申塚から江戸六地蔵尊眞性寺へ向かう
庚申塚の境内を後にし、巣鴨地蔵通り商店街沿いでは最後の史跡である眞性寺へ向かいます。
眞性寺はJR巣鴨駅寄りの端にあるので、巣鴨庚申塚から歩くと結構遠いです。来た道を戻り、10分ほどかけて到着しました。
JR巣鴨駅から商店街に向かう場合、真っ先に目に入る場所にあるのが「江戸六地蔵尊眞性寺」です。
江戸六地蔵尊 眞性寺
眞性寺の入口左横には、「江戸六地蔵第三番 御府内第三十三番 眞性寺」の看板と、隣には眞性寺の由緒書き。そして「真言宗豊山派醫王山眞性寺」の石碑が置かれています。
眞性寺は、江戸六地蔵で有名なお寺。
正式名称を「真言宗豊山派醫王山東光院眞性寺」と言い、真言宗に属し、奈良県桜井市初瀬にある総本山長谷寺の末寺です。
お寺の始まりは不明ですが、聖武天皇(在位:724年2月4日~749年7月2日)の祈願に基づいて建立、行基菩薩(奈良時代、社会事業に尽力した法相宗の僧)が開いたものと伝えられています。
ご本尊は薬師如来。秘仏であるため、一切開扉されていないそうです。
こういう秘仏ってお坊さんも見ることができないんですかね。私、そこら辺の知識が乏しいんですが。
本当に中に像が入っているのか、開けて確かめたくなっちゃいますよね。・・・めっちゃ罰当たりですけど(笑)。
巣鴨は中山道の江戸への入口に当たるため、8代将軍徳川吉宗が鷹狩りに来た際、眞性寺が御膳所とされました。
暴れん坊将軍!!
この前新春スペシャルで「新・暴れん坊将軍」見たばかりだからめっちゃタイムリー。鷹狩りでも暴れてたんだね、新さん。
白い提灯が彩る境内を散策
早速境内に入って行きます!
昼過ぎの午後だからか人が少なくて、のんびり境内を散策できました。
境内の左側には、びっちりと白い提灯が飾られていて、協賛社なのかしら、お店の名前が書かれていました。
うっ・・・串に刺さった団子が頭をよぎる・・・
和菓子パラダイス過ぎる巣鴨商店街に脳が犯され始めているわ、私。
境内の中にはところどころに桜の木が植えられています。今は12月なので流石に枯れ木に花は咲かせられませんが、以前春先にここを訪れたときは桜のピンクが白い提灯に映えて、とってもきれいでした。
暖かい時期に訪れてみるのもおすすめです。
他に、松尾芭蕉の句碑や日露戦争戦没者の記念碑なども置かれています。
境内の右側には、眞性寺の沿革などが書かれたパネルが設置されています。
毎年6月24日に、災い回避祈願の御祈願として「百万遍大数珠供養」が行われているんですね。
全長16m、541個の大念珠を沢山の人で廻す・・・。
スケールが大きすぎてイメージが湧かなかったので、帰ってから動画で検索して見てみました。数百人の人が輪になって、大きい数珠を「南無阿弥陀仏」と唱えながら廻していましたよ。
運動会の綱引きを思い出したのはきっと私だけ。
江戸六地蔵が造られたのは正徳4年〔1714〕9月。
ということは、文久3年〔1863〕2月に中山道を通って江戸から京都に向かった浪士組も、当然江戸六地蔵を見てるってわけか・・・。
何でもかんでも新選組に繋げたがる、新選組脳め。
これだけ歴史のある眞性寺。『江戸名所図会』にも、「巣鴨眞性寺」として挿絵が描かれているんです。
急ぐ旅路で拝んでいる暇はなかったんだろうけれど、彼らが視たものと同じお地蔵様をこの目で拝めるなんて。
膨らむ気持ちを抑えつつ、早速江戸六地蔵の元に向かいます。
旅の無事を祈る、江戸六地蔵
境内を進んだ奥の左側。蓮座の上にどっしりと鎮座していらっしゃいました。
江戸六地蔵は、高さ2m68cm、蓮花台を含めると3m45cmもあるんです。
完全に仰ぎ見る形でお顔を拝見すると、とっても穏やかなお顔をされていました。
300年以上、この地でずっと旅人たちの安全を見守っているのです。江戸時代は旅も命がけ。きっと中山道を行く人々は、この江戸六地蔵に手を合わせて旅の無事と安全を祈っていたんでしょうね。
お地蔵様の足元には、江戸六地蔵についての説明版が置かれています。
江戸六地蔵は、宝永3年〔1706〕江戸深川の地蔵坊正元によって造立。江戸の出入り口6ヶ所(巣鴨の他、品川の品川寺・新宿の太宗寺・東浅草の東禅寺・江東区の霊巌寺と永代寺)にそれぞれ一体ずつ地蔵菩薩が置かれました。
このうち、永代寺を除く5体はお寺と共に現存しており、今でも見ることができます。
江戸六地蔵の足元には、「江戸六地蔵香」なるものが用意されていました。
なるほど、ご利益は旅の安全を祈るお地蔵様らしく、「交通安全」か。
普段通勤で長時間車の運転をする私は、とにかく「交通安全」の文言に弱いのです。だって交通事故コワい。もらい事故コワい。
100円をさい銭箱にキッチリ納め、お線香を立てて「交通安全」をお祈りさせていただきました。
100円で良いのかな。1000円とか入れたら×10倍の交通安全パワーくれないかしら。
ちなみに、眞性寺は正門の他に、江戸六地蔵のすぐ側にも門があり、こちらからも出入りすることができます。
眞性寺の本殿
江戸六地蔵のさらに奥には眞性寺の本殿があります。
長い階段があり、「奉納 南無薬師如来」ののぼりがはためいていました。
意味ありげに正面の扉が開いていたので、気になって階段を上り、覗いてみました。真っ暗でよく見えなかったけど・・・。
まさか、中には噂の秘仏「薬師如来様」がいらっしゃったのかしら。
江戸六地蔵尊 眞性寺の詳細情報・地図
住所 | 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨3丁目21−21 |
関連サイト | 巣鴨地蔵通り商店街公式サイト「江戸六地蔵尊 眞性寺」 |
旅は巣鴨商店街を外れ、周辺の史跡へ
眞性寺の本殿を後にし、今回の巣鴨地蔵通り商店街を巡る旅は終わります。
今回はお寺メインに巡ったので、お店にはほとんど立ち寄りませんでした。巣鴨の商店街は本当にお店が多すぎて、ふらふらしていたらあっという間に1日が終わりそう(笑)。
さて、ここからは商店街から少し足を延ばして、周辺にある「本妙寺」と「徳川慶喜巣鴨邸跡」を巡って行きます。
今回はここまで。
以上、『巣鴨地蔵通り商店街を巡る旅』をお届けしました。
次の史跡巡り地「本妙寺」はこちらから▼
巣鴨地蔵通り商店街の詳細情報・アクセス
巣鴨地蔵通り商店街の詳細情報・アクセス
住所 | 〒170-0002 東京都豊島区巣鴨4-22-8 |
アクセス | 🔷JR巣鴨駅より 改札正面の国道17号線を反対側へ渡り、右方向へ徒歩約5分 🔷都営三田線巣鴨駅より A3出口を出てまっすぐ、徒歩約1分 🔷都電荒川線庚申塚駅より 駅前交差点「庚申塚」の目の前(庚申塚側商店街入口)徒歩約1分 🔷JR大塚駅より 北口改札より右方向へ徒歩約8分 🔷都営バス「とげぬき地蔵前」より 約40m・徒歩約1分 都営バス「巣鴨4丁目」より 約150m・徒歩約3分 🔷車での行き方 首都高速5号池袋線「護国寺」出口より約3.5km(約5分) 首都高速中央環状線「新板橋」出口より約1.8km(約3分) |
駐車場 | 商店街に駐車場はありません 近隣のコインパーキング「タイムズパーキング」など |
関連サイト | 巣鴨地蔵通り商店街公式サイト「巣鴨地蔵通り商店街」 |
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